電子記録債権とは ~種類とメリット・デメリットについて~
中小企業庁は取引適正化に向けた5つの取り組みの1つとして、2026年までに「約束手形」の利用廃止をするとともに小切手を全面的に電子化する方針が示されています。つまり、紙による決済から、電子的決済サービスに移行していく動きがあります。 中小企業庁PDF
財務省の法人企業統計調査によると、支払手形の発行残高は1990年度の約107兆円をピークに減少傾向にあるとされています。しかし、製造業・建設業などでは依然利用頻度が高く、手形を用いる取引は発生しています。そのため、約束手形が廃止されることになっても、手形の利用をすぐになくすことは困難とも予想されます。
そうした手形文化の根付いた企業に対して、「銀行振込による支払い」方法とあわせて「でんさい」への切り替えも推奨しています。「でんさい」とは「電子記録債権」のことで、2013年から登場した新しい決済方法です。手形の事務手続きや印紙税、保管、搬送などの悩みを解決する新たな決済手段です。
記事では、電子記録債権の種類とメリット・デメリットについてご案内するとともに、「どっと原価シリーズ」での「電子手形」「でんさいネット」機能をご紹介します。
電子記録債権とは
電子債権は、国から認可を受けた電子債権記録機関がコンピュータ上で、債権者と債務者の名前、支払額、支払日などの情報を管理する仕組みです。紛失や盗難のリスクがなく、事業者はインターネットなどを通じて債権を売買することで、期限前でも換金が可能となり、さらに分割して譲渡することもできます。電子債権は、2008年12月に施行された電子記録債権法により、事業者の資金調達の円滑化等を図るために創設された新しい類型の金銭債権です。
電子記録債権の分類
1 電子記録手形(でんさい)
- 手形と同様に期日指定での決済が可能
- 印紙税が不要
- 分割譲渡が可能で資金調達の柔軟性が高い
- 債権譲渡が電子記録上で完了するため、手続きが簡略化
2 電子手形(電手)
- 既存の手形と同じ取扱いだが、電子化により紛失や盗難のリスクが低減
- 期日決済の確実性が向上
- でんさいとは異なり、分割譲渡ができない
- 全国の手形交換所を経由して運営される
3 電子債権記録機関を利用する方式
➁特徴:
その他の電子債権に関連する仕組み
1 ファクタリング(電子債権型)
2 電子契約と組み合わせた債権管理
比較表
項目 | でんさい | 電子手形(電手) | その他電子債権 |
運営機関 | でんさいネット | 手形交換所 | 各社独自の機関 |
分割譲渡 | 可能 | 不可 | 機関による |
印紙税 | 不要 | 不要 | 不要 |
支払期日 | 期日支払 | 期日支払 | 機関による |
ファクタリング | 利用可能 | 限定的 | 利用可能 |
電子債権は、従来の紙ベースの手形・売掛金よりも管理がしやすく、資金繰りの柔軟性が向上するため、多くの企業が導入を進めています。どの方式を選ぶかは、自社の取引先の対応状況や資金調達のニーズに応じて決めるのがよいでしょう。
どっと原価シリーズの電子手形(電子債権)対応
「どっと原価シリーズ」は「電子手形」「でんさいネット」機能を「支払管理オプション」へ統合し、より電子決済の効率化に貢献します。支払管理オプションに以下の機能を追加しました。
1 「手形小切手オプション」を標準化し、「支払管理オプション」に統合します。
2 支払伝票区分に「電子手形」を追加(支払確定時に計算できます。)
3 でんさいネット形式のデータ出力を追加
「でんさいネットデータ」で作成されるデータ形式は、でんさいネット標準フォーマット(固定長テキスト形式)の「集信1」形式のデータです。作成した電子記録債務データは、各金融機関のWebシステムで取り込む必要があります。
まとめ
支払手形の利用は減少傾向にありますが、根強い手形文化は無くなることはありません。政府による約束手形廃止の動きは、電子的決済サービスへの移行を促進することでしょう。新たな類型の金銭債権サービスに対応できるよう、速やかな準備を進めたいところです。「どっと原価シリーズ」では、既にご利用のお客様、現在ご利用を検討されているお客様に向けて、更なるサービスの拡充を準備しております。