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工事仕掛金の管理方法と建設業での運用のポイント

2025.03.05
経営・決算

建設業では、工事の採算管理が経営を左右する重要な要素となります。しかし、多くの建設業者にとって、工事仕掛金の適切な管理に苦労しているのが実情ではないでしょうか。この記事では、工事仕掛金の基本概念から具体的な会計処理、日々の管理のポイントまで、建設業における工事仕掛金の運用について詳しく解説します。読み進めることで、適切な工事仕掛金管理のノウハウが身につき、経営の安定化と効率化につなげることができるはずです。

工事仕掛金とは?建設業における重要性

工事仕掛金とは、建設工事が完成するまでの間に発生した費用のことを指します。一般的な製造業における仕掛品と同じような概念です。

建設工事は、受注してから完成引渡しまでに長い期間を要することが多いため、工事途中で発生した費用を適切に管理することが重要になります。この工事途中の費用を「未成工事支出金」と呼び、貸借対照表上は流動資産に計上されます。

未成工事支出金に含まれる費目

未成工事支出金には、工事を進めるために直接必要となった費用が含まれます。具体的には、以下のような費目が挙げられます。

  • 材料費(建設資材などの購入費用)
  • 労務費(現場で働く作業員の給与や法定福利費)
  • 外注費(工事の一部を外部の専門業者に委託した際の費用)
  • 経費(現場で使用する水道光熱費や作業員の移動費用など)

ただし、現場事務員の給与など、工事に直接関連しない間接費は未成工事支出金には含まれません。

工事仕掛金の会計処理の原則

建設業では、工事が完成するまでは売上を計上することができません。そのため、工事完成前に発生した費用は未成工事支出金として資産計上し、工事が完成した時点で、対応する売上とともに損益計算書に計上します。

この処理は、費用と収益を対応させるという会計の基本原則に基づいています。つまり、工事にかかった費用は、その工事の売上が計上されるまでは費用として認識せず、工事が完成した時点で初めて費用として計上するのです。

工事進行基準と工事完成基準の違い

工事仕掛金の会計処理には、大きく分けて2つの方法があります。ひとつは工事進行基準、もうひとつは工事完成基準です。

工事進行基準では、工事の進捗度合いに応じて、期末ごとに工事収益と工事原価を計上していきます。一方、工事完成基準では、工事が完成した時点で、工事収益と工事原価を一括して計上します。

基準特徴
工事進行基準各期末に進捗度に応じて収益・費用を計上
工事完成基準工事完成時に収益・費用を一括計上

どちらの基準を採用するかは、企業の判断に委ねられています。しかし、工事進行基準のほうが、工事の進捗状況に応じた適切な期間損益計算ができるとされています。

工事仕掛金の具体的な会計処理方法

ここでは、工事完成時と工事未完成時の具体的な会計処理の例を見ていきましょう。併せて、中間金受領時の留意点や工事仕掛金の計算方法と注意点についても解説します。

工事完成時の会計処理の例

工事が完成し、引渡しが行われた時点で、工事収益と工事原価を計上します。例えば、2,000万円の工事が完成した場合、以下のような仕訳になります。

  • 工事未収金 2,000万円 / 売上高 2,000万円
  • 工事費用 1,600万円 /未成工事支出金 1,600万円

この処理により、工事収益と工事原価が対応し、適切な損益計算が行われます。

工事未完成時の会計処理の例

工事が完成する前の期末においては、発生した工事費用を未成工事支出金として資産計上します。同じく2,000万円の工事を例にとると、工事費用の支出分は、以下のような仕訳になります。

  • 未成工事支出金 1,600万円 / 工事未払金 1,600万円

この処理により、工事完成前に発生した費用が適切に資産計上され、工事完成時まで損益計算に反映されません。

中間金受領時の留意点

建設工事では、工事完成前に中間金(手付金や前払金など)を受領することがあります。しかし、この中間金は前受金として処理し、工事完成時まで売上計上してはいけません。

中間金を受領した場合、以下のような仕訳になります。

  • 現金預金 500万円 / 前受金 500万円

工事完成時に、前受金を工事未収金に振り替えます。

工事仕掛金の計算方法と注意点

工事仕掛金は、発生した工事費用の合計額から、工事完成部分に対応する工事費用を差し引いて計算します。この計算を正確に行うためには、工事ごとに費用を適切に集計・管理する必要があります。

また、工事仕掛金の計算を誤ると、損益計算が適切に行われないだけでなく、脱税行為とみなされるリスクもあります。特に税務調査では、工事仕掛金は重点的に確認される項目ですから、慎重に処理を進めなければなりません。

工事仕掛金の管理で押さえるべきポイント

ここでは、工事仕掛金の管理で押さえるべきポイントについて詳しく説明していきます。

適切な原価管理の重要性

工事仕掛金を適切に管理するためには、まず何よりも正確な原価管理が求められます。建設工事では、材料費、労務費、外注費など様々な費用が発生しますが、これらを漏れなく把握し、適切に集計していく必要があります。

原価管理を疎かにすると、工事の採算性を正しく判断できなくなるだけでなく、損益計算書の数字にも影響が出てきます。特に決算時には、正確な工事原価の把握が欠かせません。日々の丁寧な記録と、定期的な集計・分析が重要になるでしょう。

工事ごとの採算管理の方法

建設業では、一つ一つの工事が利益を生み出す単位となります。したがって、トータルの原価管理だけでなく、個別の工事ごとに採算を管理していく必要があります。

そのためには、受注時に適切な原価見積りを行い、予算を設定することが大切です。そして工事が進捗していく中で、定期的に実績原価と予算を比較し、採算状況を確認していきます。差異が生じている場合には、早めに原因を究明し、対策を講じることが求められます。

工事ごとの採算管理を適切に行うことで、赤字工事の早期発見と改善、さらには全体の利益率の向上につなげていくことができるのです。

日々の記録と証憑書類の整理方法

適切な原価管理と採算管理を行うためには、日々の正確な記録と証憑書類の整理が欠かせません。工事現場で発生したすべての費用について、漏れや誤りがないよう記録し、証憑書類と突き合わせて確認する作業が必要です。

この際、現場監督者と経理担当者が密に連携を取ることが重要となります。現場では 小まめに日報を作成し、経理ではそれを適切に処理していく。こうした協力体制があってこそ、円滑な工事仕掛金の管理が可能になるのです。

証憑書類は種類ごとに分類し、工事ごとにファイリングしておくと良いでしょう。税務調査の際にもスムーズに対応できます。日々の地道な積み重ねが、経営の健全化につながっていくのです。

工事仕掛金の棚卸の実施方法

工事仕掛金は、期末決算の際に棚卸を行い、その残高を確定させる必要があります。この工事仕掛金の棚卸は、通常の商品在庫の棚卸とは異なり、やや特殊な手順を踏みます。

まず、期末日時点での工事の進捗度を確認します。これは現場監督者への聞き取りや、設計図との照らし合わせなどを通じて行います。そして、その進捗度に基づき、発生済みの工事原価を集計していきます。

この作業では、日々の原価記録と証憑書類が重要な役割を果たします。棚卸資産としての工事仕掛金の評価額は、正確な裏付けに基づいて算定されなければならないのです。

棚卸の結果は、貸借対照表における未成工事支出金の残高に反映されます。この数値は、銀行融資の際の重要な判断材料となることもありますので、正確性には細心の注意を払う必要があります。

工事仕掛金に関する税務上の留意点

ここでは、工事仕掛金に関する税務上のポイントを見ていきましょう。

税務調査で重点的にチェックされる項目

国税当局が建設業の税務調査を行う際、工事仕掛金は必ず確認される項目のひとつです。調査官は、工事ごとの原価集計が適切に行われているか、完成工事と未完成工事の区分が正しいかなどを入念にチェックします。

また、意図的に利益調整を行っていないかという点も、重点的に確認されます。例えば、完成工事の原価を不当に未成工事支出金に振り替えることで、利益を先送りするようなケースなどは厳しく指摘されることになります。

日々の原価管理を適切に行い、証憑書類を整理しておくことが、税務調査への備えとして重要となります。

脱税行為とみなされるケースと対策

工事仕掛金の計算を意図的に誤ることは、脱税行為とみなされる可能性があります。例えば、完成工事の収益を翌期に先送りしたり、架空の未成工事支出金を計上したりすることなどが、それに該当します。

こうした行為は、税務調査で発覚すれば、重加算税を課されるなど厳しい処分を受けることになります。脱税のリスクを避けるためにも、正確な工事原価の把握と、ルールに則った適正な処理が欠かせません。

社内規程を整備し、定期的な内部監査を行うことも、脱税リスクの低減につながります。万一、質問や指摘を受けた際にも、適切な説明ができるよう備えておくことが大切です。

消費税の取り扱いについて

工事仕掛金には消費税の取り扱いにも注意が必要です。未成工事支出金に含まれる費用には、原則として仮払消費税が含まれています。一方で、工事の完成引渡しを受けるまでは、消費税の確定処理を行うことができません。

したがって、完成工事高に対する消費税は、引渡し日の属する期の確定申告で納付することになります。中間金を受領している場合でも、工事完成前に消費税を納付する必要はありません。

こうした消費税の処理方法を誤ると、予定納税の計算などに影響が出てきます。確定申告の際には、特に注意深く申告書を作成するようにしましょう。

決算書への正しい反映方法

工事仕掛金は、適切に決算書に反映されなければなりません。期末においては、進行中の工事の原価を集計し、未成工事支出金として貸借対照表の流動資産に計上します。一方、完成工事に対応する原価は、工事完成基準または工事進行基準に従い、損益計算書に売上原価として計上します。

期末の棚卸に際して、工事ごとの原価集計と進捗度の確認を適切に行うことが重要です。この棚卸の結果は、決算書の信頼性に直結する重要なファクターとなります。

また、完成工事と未成工事、自社施工と外注工事などの区分を、明確に行う必要もあります。区分を誤ると、損益計算書や貸借対照表の数値が適切に表示されなくなってしまいます。

まとめ

工事仕掛金は、建設業において経営状況を正確に把握するために非常に重要な概念です。未成工事支出金として工事の途中で発生した材料費、労務費、外注費などの直接費を適切に管理し、工事の完成時に売上原価として計上することが求められます。日々の丁寧な記録と証憑書類の整理、そして定期的な棚卸の実施が、正確な工事仕掛金の算定につながります。また、税務上も工事仕掛金は重点的にチェックされる項目ですので、適正な処理を心がけることが大切です。工事仕掛金の管理を適切に行うことは、建設業の経営基盤を強化し、健全な発展へとつなげる上で大変重要なポイントだといえるでしょう。

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