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建設業で「作業日報」が重要な理由|エクセル作成の方法とデメリット、解決法を説明

2024.03.22
建設業DX

 

作業日報は、工事の進捗を把握するため、建設業では欠かせない書類の一つです。

工事担当者が現場で作る作業日報には、当日に使った材料や経費、作業員、使用した機械、工事の進捗状況などが記録されます。作業日報を各工事現場から集めて数値を集計すれば、それぞれの工事現場の状況が把握できます。どの程度工事が進み、どれくらいの労務費や経費などがかかったのか、といったことをチェックする上でも作業日報は非常に重要です。

2024年4月からは、時間外労働の上限規制が適用されます。残業時間の上限の基本は月45時間ですが、これを一日になおせば約2時間になります。2時間を超える残業が常態化していることがあれば、今から業務効率化を図るため、作業日報等に記載される残業時間の縮小に努めることが重要になってきます。

日々積み重ねられた作業日報の情報は、実は様々な業務の上流から下流まで密に生かされるべきものなのです。

作業日報作成の目的は大きく分けると4つ

過去の工事を振り返り、利益を把握する

現在は、工事の需要に対して技術者が不足しているため「下請主体の会社が元請先を選べる」現象が起きています。利益の高い工事や、得意作業で仕事がしやすく儲かる工事がわかっていれば、そういった工事を優先して受注できるのです。

作業日報で実施作業量を把握し、当該工事の出来形として工事進捗を管理します。過去に作業条件などが同じような工事作業があった場合は、見積作成時に過去の作業日報情報を参考に予定原価算出の補助とすることができます。

常用労務数量、機械稼働状況、材料納品状況などを把握し、工事原価として費目ごとに計上することで、儲かる工事か否かを把握していきます。

出来高報告のための進捗状況の把握

作業日報は、元請会社に対して請求書を発行するための出来高を報告する資料となります。元請会社から作業スケジュール変更などを求められた場合にも、人員配置変更などを迅速に判断するための材料となります。

また、工事ごとに進捗状況を把握・報告することで、会社全体の経営状況管理に寄与します。

労働環境・業務時間の把握

作業日報は、下請会社から元請会社へ、指導や指示が適切に行われていることを報告する資料となります。作業するうえで危険な箇所や障害が無いかなどを報告し、労働環境の改善や事故を未然に防ぎます。

建設現場では工期が近付くと過労働になってしまいがちです。作業日報で労働時間を可視化することで過労働を未然に防ぐことができます。

ノウハウを属人化させないための情報共有

作業日報は、資機材供与、作業人員、重機等機械類配置等の現場状況を振り返り、工事作業が円滑に実施されるよう、手配するための資料にもなります。

ある程度経験のある現場監督であれば、肌感覚で利益を出せるようにコントロールできることはありますが、確実とは言えません。今は、材料費や労務費などのコストが右肩上がりです。現場の感覚に任せるのは危険です。下手をすれば、工事に必要以上のコストをかけることになり大きな無駄となってしまいます。

また、1990年以降、建設業就労者のうち29歳以下の割合は下がり続け、いまや全体の1割程度です。そして3割を超える就労者が55歳以上となっており、これからの建設業を続けていくためには熟練者が残っている今のうちに若手を増やし、技能を継承することが急務です。作業日報は、工事作業の熟練作業員のノウハウを若い作業員に共有するためにも活用できます。

作業日報を作成するメリット3つ

業務効率の向上

作業日報を作成することで業務の振り返りができ、所定作業量の把握や予定工事の必要日数、必要材料数等の判断が行えるため、作業計画の正確性が向上します。

業務効率化の向上は、働き方改革にも有効です。今は多くの業種で働き方改革がすすめられており、これに建設会社も続かなければ他業種に人材が流出してしまいます。目の前に迫っている残業上限の規制に備えるためにも業務効率化を推し進めなくてはいけません。 

コスト削減

建設業の業務の流れはほぼ共通しています。案件を受注し、工事を進め、完成させる。これに伴ってお金のやりとりが発生します。こうした業務の流れは、多くの会社で当然のように日々行われています。そのために業務に無駄があっても気づかずに放置されていることが少なくありません。

作業日報で所定作業量を把握することによって、無理無駄を改善できます。また、予定している工事のコスト削減を実現できます。

労務管理の効率化

作業日報を介して指示や確認を行うことで、作業内容が可視化されるため、管理側の業務効率を向上できます。

業務に関する情報を集めるときに多くの事務作業コストがかかっています。経費精算や給与計算など、会社に必要な業務を行うには情報共有が必要になります。こうした情報を補う作業日報を活用することで、労務管理を効率化できる可能性が高まります。

エクセルや紙から始める!作業日報の書式/書き方

作業日報を紙やExcelで作成する場合、記入しておきたい項目や書き方の例をご紹介します。

作業日報に記入する項目

工事名社内での共有情報として重要です。
作業日付出面管理や請求管理に利用します。
記入者名現場代理人名など
天気養生作業等管理、現場環境管理などに利用します。
気温セメントやアスファルトなどの施工時の品質管理にも利用します。
作業時間出面情報などを給与計算、出来高請求に利用します。
時間外作業時間社員の給与データとして利用します。
工種実行予算との対比に必要です。
作業内容 作業振り返りの情報として利用できます。
作業実施数量日進量の把握や所定作業数量の基礎として利用します。
共有情報社内への報告として利用できます。
使用機械減価償却データとして利用する場合もあります。
備考

日報の作成サンプル

※クリックで拡大します

出来高管理表のサンプル

※クリックで拡大します

作業日報を紙やエクセルで管理する際の問題点

工事では、作業に応じて大量の情報が生まれます。作業日報はそんな工事情報を記録するわけですが、日報作成や情報の管理には大変な手間が発生します。

ほとんどの会社は紙ベースやExcelでスタートしますが、作業日報を有効に作成、活用するには多くの阻害要因があり、蓄積される情報の集計や分析には苦労します。

PCスキルの問題

紙ベースで作成される作業日報をデータ化しようと検討する場合、立ちはだかるのはPCスキルだといわれます。年々、高齢化する作業員がこれまで触ってこなかったパソコンやスマホを操り、入力することは多くの時間を要します。システム化するにも、自社の運用に合わせたシステムを探し出すことにも多くの時間が必要です。

現場情報の集計・分析に手間がかかる

工事情報から作業時間、作業量や作業内容、使用機械の状況など、作業日報には多くの情報が含まれています。

そんな多くの情報を集計し、取りまとめ、分析情報として活用できるようにするまでには多くの労力がかかります。日々の現場作業に加え、机上での現場情報集計は骨が折れる作業です。とりまとめを満足に実施できないと、作業の振り返りにも支障が出て、最悪の場合、危険な兆候を見落とす結果にもつながります。

別途、情報の活用・共有が必要

せっかく作成した作業日報も、書いて終わりでは、宝の持ち腐れになってしまいます。また、集計し取りまとめた結果が現場管理者の手元にとどまり、社内公開や報告に利用されなければ、情報が分散された状態となり、社内の作業員個々の情報蓄積を阻みます。

作業日報をデジタル化するメリット

作業日報をデジタル化(システム化)することで、前述の問題が解決します。

作成や集計の手間が省かれ、事務作業による残業時間の圧迫もなくなります。また情報の共有化が当然のように行われるので、現場事故なども未然に防がれて大幅に減少することでしょう。

建設業には多くの業務があり、作業日報は特に重要な情報源とされていますが、業務終了後に現場監督など管理者の手によって作成されることがほとんどです。それ以外の作業員は就業記録となる現場入退場の記録を行うことがメインとなっています。

工事作業を行う会社規模や元請下請などの契約条件にもよりますが、どの会社でも一様に作業日報を手軽に記録できる状態であれば、業務効率は業界全体で大きく向上するでしょう。

現在は、多くの作業日報作成ツールが存在するので、情報を入手して選択することが重要です。ツールの種類としては、「業務統合型」の原価管理ソフトなどが最適です。

「業務統合型」原価管理ソフトで日報管理をするメリット

情報の入力手間が少ない

工事基本情報に関わる情報は一度入力することで、どの業務をしていても確認、引用できます。作業日報を作成する場合も、必要な情報を入力しやすく、振り返りの際も検索しやすく設計されています。

データ一元化が可能

「業務統合タイプ」は営業・購買・工事・経理部門などトータルに一元管理でき、業務効率化と利益向上のための原価管理の両立が行えます。

作業部門が異なっており、社内の情報が部門間を横断する場合でも、一元化してどの部門でも同じデータを確認、活用することができます。

複数の業務管理が行える

営業部門の見積作成や、経理部門の支払伝票、売上伝票の作成、買掛、売掛の管理、工事部門の実行予算管理、発注管理も行えます。

会社全体の業務管理を行える基幹システムとして利用できます。

外部システムとの連携

基幹システムの中でデータを作成するため、周辺業務の外部システムとの連携にデータ活用が容易に行えます。

例えば、買掛伝票、売掛伝票は会社決算を管理する会計システム、現場労務勤怠の出面データは給与計算を行う給与計算システム、取引業者への振込データは銀行のオンラインバンキングシステムなど、特に経理まわりのシステムとの連携に便利です。

工事業務周辺のシステムの場合は、工事原価管理でデータを受け入れるケースが多く、見積作成ソフトから実行予算データを受け入れて、横断する部門でも可視化できるようにすることもできます。

最近では、電子取引が盛んになっていますので、WEB上の電子取引アプリや電子帳簿保存法に伴う証憑帳簿データ保存アプリとの連携も増えています。

 

人件費の確保、人材不足、新型コロナ後の影響、インボイス制度の導入、2024年問題など、中小建設会社に課題は山積みですが、こうした課題に取り組むには、十分な利益を確保できる企業としてゆとりのある企業体質をつくらねばなりません。そのためにも利益管理にしっかりと目を向けるべきです。

作業日報から得られる情報は、日々積上げられて会社利益を形成します。これからも如何に日々の情報を分散させずに、会社の資産として管理運用できるのかを考えてみてください。

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